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名古屋地方裁判所 平成5年(わ)419号 判決 1993年5月27日

本籍

愛知県豊田市桝塚東町中郷三番四番合併地

住居

右同所

会社役員

竹本修夫

昭和一八年九月二七日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官依田隆文出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金三〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

被告人に対し、この裁判確定の日から五年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、愛知県豊田市桝塚東町中郷三番四番合併地に居住し、名古屋市緑区大高町大根山一五番地において、竹本電気工事店の名称で電気工事業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、架空外注費及び水増し外注費を計上するなどの方法によって所得の一部を秘匿した上

第一  平成元年分の実際総所得金額が七二四二万七五二〇円であったにもかかわらず、平成二年三月一五日、同県岡崎市明大寺本町一丁目四六番地所在の所轄岡崎税務署において、同税務署長に対し、みなし法人課税方式を選択して、平成元年分のみなし法人所得金額が一九四九万二一四〇円、総所得金額が二六八一万〇五二〇円で、これに対する所得額が一四四九万九七〇〇円(源泉徴収税額を控除した申告納税額は一〇二九万九七〇〇円)である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額三一四〇万八五〇〇円(源泉徴収税額を控除した所得税額は二七二〇万八五〇〇円)と右申告税額との差額一六九〇万八八〇〇円を免れ

第二  平成二年分の実際総所得金額が一億一五一五万九〇九一円であったにもかかわらず、平成三年二月二六日、前記岡崎税務署において、同税務署長に対し、平成二年分の総所得金額が三八九五万〇八四三円であり、これに対する所得税額が一四五二万四五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額五二六二万八五〇〇円と右申告税額との差額三八一〇万四〇〇〇円を免れ

第三  平成三年の実際総所得金額が一億六四三八万一八一六円であったにもかかわらず、平成四年三月五日、前記岡崎税務署において、同税務署長に対し、平成三年分の総所得金額が七一九一万三一九七円で、これに対する所得税額が三〇八二万一〇〇〇円(源泉徴収税額を控除した申告納税額は二九四五万六六〇〇円)である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額七七〇五万五〇〇〇円(源泉徴収税額を控除した所得税額は七五六九万〇六〇〇円)と右申告税額との差額四六二三万四〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官及び大蔵事務官に対する各供述調書

一  被告人作成の各上申書

一  竹本智江子の検察官及び大蔵事務官に対する各供述調書

一  竹本信幸、池田光邦、鈴木寿一、鈴木鉄博、田中稔の大蔵事務官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の各査察官調査書(甲一一五、一一六、一一九ないし一二三、一二六、一二八)

判示第一事実について

一  大蔵事務官作成の各証明書(甲四五、五〇)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲一三〇)

判示第二、第三の各事実について

一  下世ひとみ、近藤増夫、渡邊範稔の大蔵事務官に対する各供述調書

一  渡邊範稔の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の各査察官調査書甲一一八、一二四、一二七)

判示第二事実について

一  大蔵事務官作成の各証明書(甲四六、五一)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲一三一)

判示第三事実について

一  伊奈英雄、伊奈勝子、牧野弘子の大蔵事務官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の各査察官調査書(甲一一七、一二五、一二九)

一  大蔵事務官作成の各証明書(甲四七、五二)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(甲一三二)

(法令の適用)

被告人にかかる判示各所為は各所得税法二三八条一項、二項に該当するので、所定刑中いずれも懲役と罰金の併科刑を選択し、以上の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により、犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、以上の刑期及び金額の範囲内で、被告人を懲役一年六月及び罰金三〇〇〇万円に処し、同法一八条により、被告人において右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用し、被告人に対しこの裁判確定の日から五年間右懲役刑の執行を猶予する。訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項本文によって被告人に負担させる。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 笹本忠男)

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